不安


君と一緒に入るためなら、俺はどんな事でもするのに。

君に愛されるためなら、俺はすべてを捨てられるのに。


もしも、君の瞳に俺以外の人が映ったら・・・

考えたくもない。


気付いてよ、こんな俺の不安に。

どうして肝心な事は読み取ってくれないの?



「黒崎君」
「なんですか、巽さん?」
「これをお願いしてもいいですか?」
「はい」
そう言って、巽が密に書類を渡す。

「ああ、それからもう一つ」
「なんだよ、ちゃんとやってるじゃん」
巽が都筑を睨んだのだが、都筑は一応マジメに始末書の山を片付けていた。
「当然でしょう、それぐらいで威張らないで下さい」
「別に威張ってないよぅ」
都筑が拗ねたように言う。

「黒崎君、今日は都筑さんもマジメにやっている様ですし、残業は付き合わなくていいですよ」
にっこりと笑顔で言う巽のセリフに都筑が反論する。
「なんだよぅ、一生懸命やってても文句言うの!?」
「そらまぁ、日頃の行いが行いやしな」
デスクでお茶を啜っていた亘理が話に加わる。
「……亘理まで……。そんな事言って二人とも俺から密を奪う気なんだっ!! ダメだよ、密!」
「……何わけのわかんねぇ事言ってんだよ。手ぇ動かせ」
「………………どうせ……どうせ俺なんか……」
容赦無い密の言葉に隅でいじける都筑。


「まったく、いつまでもいじけてないで早く仕事を済ませなさい」
「ふ〜んだ、マジメにやったて小言言われるんなら、やんない方がましだも〜ん」
完全にいじけてしまった都筑に肩をすくめる三人。

「せやったら坊、今夜は食事にでも行かんか?」
「へ?」
密は突然の亘理の提案に少々間抜けな声で聞き返す。
「せやから食事に」
「でしたら黒崎君、私と行きませんか?」
亘理の言葉を遮り、巽がわりこむ。
「ダメッッ!! 二人とも俺の密を誘惑しないでくれる!?」
「わっ、放せッ」
まるで見せびらかせるように密を抱き締め、威嚇する都筑。

「あんたは仕事を終わらせる事だけ考えていればいいんです!!」
「やだね、俺の密を誘惑しようとするからいけないんだろ」
「仕事とは関係ないやろ(正論)」

しばしの攻防戦

「だァッ! うるせ−都筑ッ!! いい加減に放せッ」
「やだよぅ……って、イタタタッ」
いい加減にキレた密は都筑のみぞおち近くにひじてつを食らわす。

「……とっとと仕事終わらせろよ」
「おわんないよぅ〜」
都筑はわざとらしく密に泣きつく。

「早く取りかかればいいでしょう」
「せやで? 坊からも何とか言ってやり」
冷たく言う二人。

無理も無い。
召喚課のアイドル・黒崎密と公私ともにパートナーである上、ろくに仕事も出来ない昼行灯なのだ。
召喚課の人達にしてみれば、不釣り合いこのうえないのだ。
そのせいで巽・亘理の都筑への接し方は最近冷たい。

「あ〜、もう。おい都筑」
「ん? なになに?」
そろそろ収集をつけなければならない密は、呆れながら、都筑を呼ぶ。
もちろん、都筑は満面の笑顔で密を覗き込む。

「仕事終わらせられたら、今日は俺が飯作ってやるよ」
「えっ!? ほんと? 約束だよ!?」
都筑は密を放して始末書の山に向かう。
「鶴の一声、ならぬ、坊の一声やな」
「はじめっからこのペースでやってくれれば……」
巽も亘理もかなり呆れていた。
都筑はいつもの2、3倍の早さで書類を書いている。

実の所、密はあまり料理をしないし、都筑には絶対作らせないので、二人の夕食はもっぱら弁当なのだ。
なので滅多に味わえない密の手料理を、都筑が逃すはずもない。


「おわったぁ〜!」
日も沈みかけた頃、都筑は始末書を書き上げてしまったのだ。
とは言っても、部屋には都筑しかいないが。
「さぁ〜て、密を迎えに行こ〜ッと」
終業時には、すでに始末書の量も少なかったので、密は書庫室で時間を潰してくる言ったのだ。
「この時間なら、密の寝顔が見られるかなぁvv」
書庫室に行くと、たいてい密は寝てしまっているのだ。
都筑はこれから見られるであろう密の天使のような寝顔を想像してへらへらしていた。

「お前の顔はどんだけゆるむんや……」
途中で亘理に出くわす。
「いいだろ、別にぃ」
亘理が呆れる程ゆるみきった顔を引き締めながら都筑が言う。
「ところでお前、始末書書き終わったんか?」
「そりゃもうばっちり」
「いつもそれぐらいでやったらええのに……。坊にも迷惑かけるし」
嫌味のつもりで亘理は言った。
「……たまには俺もがんばろうと思っただけじゃない」
「…いつもやれや。ああ、もうええわ。坊、書庫室におるんやろ?」
「うん、じゃ〜ね」
一瞬で元気になる都筑に亘理は呆れるしか無い。


「ありゃ、起きてた」
「起きてちゃわり−か」
書庫室に行くと予想に反して密は起きていた。
密は都筑の言葉に不機嫌に言う。

「別に悪いなんて言ってないよ。ただいつもは寝てるじゃない。だから寝てると思ったの」
近くにあった椅子に座って密を後ろから抱き締める。
「なにしてんだよ」
密は上を向いて都筑を睨むが上目遣いで、しかもやはり眠そうな瞳で睨まれても可愛いvvとしか都筑は思わない。

「仕事は?」
もういい、と都筑の行動を無視する事にした密は視線を活字に戻す。
「提出シトキマシタ」
無視された事に少々傷付きながら答える。

「じゃ、帰ろっか」
「ああ」
そういって召喚課に行き、帰り支度をして課長室にいた巽に挨拶してかえる。


「夕飯何つくんの?」
「決めてない」
作るにも材料が無いので買い出しに行く。

「おらッ、よだれたらしてんじゃねぇ」
デパートのケーキ屋さんの前で、ケーキに見とれている都筑をこずく。
「ねぇ、これ甘さひかえめだから密も食べられるんじゃない?」
チーズケーキを指差す。
「いらねーよ」
「ね〜、買おうよぅ密ぁ〜」
犬耳をたらしてお願いする。
「食いたきゃ一人で食えよッ」
「うー、いいもん、密の分も買っちゃうから」
そう言って、自分の分と密の分の会計を済ます。
「あとで一緒に食べよーねぇ」
「一人で食えって言ってんだろっ!」
満面の笑みで言ってくる都筑の脇腹を打って密はスタスタと進んで行く。
「ああーっ、密待ってよぅ〜」


密の家で夕食を済ませ、風呂に入ってから二人で寝る。
ただし、ただ寝るだけ。
ほぼ毎日一緒に寝ているが、体を重ねた事はあまり無い。
密を怖がらせてしまうのがいやで都筑は我慢する。



密は分かってるのかな、俺がどれだけ不安なのかを

こんなに密を欲している俺の思いに

それとも気付いていない振りをしてるだけなの?

君が俺以外のものを見ている時の俺の気持ちに

もし・・・もしもそのままその瞳が俺以外の人を映すようになったら・・・俺はどうするだろう

密をどこかに閉じ込めて、俺だけのものにするのかな

それとも・・・・・・

毎日平静を装って、自分のこの底なしの欲望と不安を抑えている

でも、そろそろ限界も近いんだ

そろそろ俺を受け入れてくれてもいいだろう?

そうして、早く俺の心の不安を取り除いて・・・

-end-

コメント:
・・・ほのぼのなのかな・・・。
これは都筑さんだけシリアス気分です。しかも言いたい事が意味不明です。



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