猫は気まぐれ  第1話

なんだか胸の辺りが重い。
「う……ん?」
あれ? 密がいない。
ぼんやりした頭で隣を見ると密がいなかった。
…………服、あるぞ…………。
よく見れば洋服だけがあった。変だと思いつつ胸の重みの正体を知ろうと胸の方を見ると
「は?」
俺はわけもわからず声をあげた。
……どう見てもネコだ。
俺がしばらく呆然と見ているとネコは目を覚ましたようだ。
「……う、ん……」
「しゃべった!?」
あれはどう考えてもネコの鳴き声じゃないだろ!?
俺が混乱しているとネコがしゃべった。
「ん? 都筑?」
「……密?」
思わず声が裏返った。
あれはいつも聞いている、寝起きでまだトロンとしている時の密の声だ。
「……何?」
まだ寝ぼけているが呼ばれた事は認識しているらしい。
「密……身体……」
「……身体?」
言われて自分の手を見る。……かわいい……。
「…………!!??」
密は自分の手がネコ手になっている事に驚いて全身を見る。
「なんだよこれ!? 都筑!!」
密が上から猫パンチで叩いてくる。痛くはないけど。
「しっ、知らないよぅ。俺だってびっくりしたんだからーっ」
「ゼェゼェ。……亘理さんだ……」
猫と言うより子猫になっているせいかすぐに息をきらす。そして気になる発言も。
呼吸が整うのを待って、密を抱き上げリビングに向かう。
「何すんだよ!?」
抱き上げられて不機嫌な密をソファーに置いてちょっと真面目な顔で聞く。
「亘理のせいだって言い切るなら、心当たりがあるわけだ」
「な、なんでだよ」
「昨日、亘理のラボで何してたの?」
俺はその辺を見のがす程密に関してバカではない(?)。

終業時に残業の俺を待っている間の暇つぶしにどこかに行ってしまったのだ。

「なんでお前そんな事知ってんだよ!?」
「もちろん後を付けていったに決まってんじゃん」
「………………」
バシッ。バシバシバシ。
「いてててっ! だって気になったんだもん」
またも痛くない猫パンチをしてくると思いきや、今度は爪も立てて来た。
「残業ホッポリ出して何してんだよ!?」
「すぐに戻ったよー」
本題からずれていきそうなので強引に戻す。
「で! どうなわけ?」
「……コーヒー飲んだから、それかも……」
絶対それだ。
しかし、これはこれで可愛いかも。不安そうな翡翠の瞳が上目遣いで俺を見上げている。
「でも、なんで一人で行ったのさ」
俺としては仕事を進めつつも心中穏やかではなかったのだ。
なにせ、亘理が密を狙っているのは明らかなのだ。それなのに二人っきりなんて。
「……大事な話があるって言われたから」
怒られるのを怖がっているような顔をされては苦笑いするしかない。
とりあえず元凶であろう亘理に直接聞く事にした。それに今日は仕事の日なのだ。



「都筑さん!また遅刻ですよ!」
召喚課のドアを開くなり巽に怒鳴られる。今はそれどころじゃないのに……。
「密もまだでしょ?」
にたりと笑って密の席を指差す。
「黒崎君はいいですよ、滅多に遅刻はしませんから。ん? なんですかその猫は!」
俺が胸に抱えていた密をめざとく見つける。
何も着ていない=裸。そんなものを他の人に見られるわけには行かないので子供用の洋服を買って着せてある。Tシャツと半ズボン。ズボンにはしっぽを通す穴も開けてある。
猫を連れて来たと言う事に召喚課の皆の視線が集まる。
「遅刻してすみません」
恐る恐る密が話す。案の定、皆混乱している。
「くっ、黒崎君!?」
「朝起きたらこうなってたんだ。たぶん亘理だと思うけど」
自然と頭が低くなってしまう。俺のせいなんて言われちゃたまらないので先に言っておく。
「可愛いですわ、密さん! 是非ピンハを!!」
「猫サイズのピンハを用意しなくちゃ!!」
「しなくていい!!」
密の言うとーりだよ、お二人さん。あ、でも見てみたいかも。
「亘理さんはラボです。行きましょう!!」

とにかく俺と密と巽で亘理のラボに向かう。


「何飲ませたんだよ亘理!?」
ラボの扉を乱暴に開けて、殴り込みをする。
「は? なんや?」
「とぼけるんじゃありません! これを見なさい!」
密を亘理の目の前に突き出す。
「どーしてくれるんですか亘理さん」
密が口を開くと、亘理は呆然として固まっていた。まぁ、俺もそうだったけど。
「……坊?」
「昨日のコーヒーですね?」
密の恨めしそうな声を聞いた亘理ははっとして言う。
「ま、まさか……でもあれは性転換の薬だったはず」
「何でんなもん俺に飲ませるんですか!?」
「あんたまさかそれで黒崎君を襲おうとしたんじゃないでしょうね!?」
亘理の言った事にも驚いたが、巽の言葉に俺はキレた。
「亘理! てめぇ、俺の密に何しようとしてんだよ!?」
「わぁ〜、すまん! 堪忍してや! 純粋な科学実験やーっ」



「……なるほどな。どうやら遅効性の猫化薬やったようやな」
しげしげと俺に抱きかかえられた密を眺める亘理。
「そんなことは分かりきっているでしょう」
「解毒剤は?」
無かったら困る。今の密も可愛いけどやっぱりいつもの密が一番だ。
「ない」
「わ〜た〜り〜!?」
「しゃ〜ないやろ? 薬自体失敗しとんのに、解毒剤があるわけあらへん」
じゃあ、作るなよ。お前の薬成功した試しがないだろ。しかもその被害者が密なんて……。
八つ当たりされんの俺なんだぞ?
へこむ俺を見て亘理が一言。
「心配せんでも一週間以内には必ず作ったるさかい」
……一週間って結構あるぞ? 100年生きて来て言うのもなんだけど。
「お願いしますよ?」
つぶらな瞳で亘理を睨んで密が言うけど、亘理には逆効果だよぅ!
ガバッと密を抱き締めて亘理と巽に見えないようにする。
「じゃ、頼んだよ亘理!! 巽、俺今日は密連れて帰るね!」
ドタドタドタ、とラボを後にし、召喚課で帰り支度をしてとっとと帰宅する。
こんなに可愛い密が誰かに誘惑されたら大変だもん。

「坊はみんなの物やのに。なぁ?」
「全くです」



「何で帰るんだよ?」
密が訝しげな顔で睨んでくる。もっともその表情も可愛いという事に密は気付いていない。
「だってその姿じゃ仕事も出来ないし。良いじゃない、たまには」
家に帰ってきて、というより帰り道から密はずっと文句を言っている。
「そんなことよりさ〜、お腹空かない?」
「空かねーよ」
素っ気無く返してきた密の言う事は無視して何を作るか考える。
「作るな! 食うんなら出前にしろ!」
「うーっ、読むなんて卑怯だぞ」
膨れっ面で俺が言うと密はプイッとよそを向いて一言。
「卑怯も何も、自己防衛だろ!」
……何もそんなにストレートに言わなくたっていいじゃん。自分では何とも思わないんだしさっ。(泣)
部屋の隅に小さくなっていじけてみる。まぁ、密が構ってくれるとは思って無いけど。
「でぇ? 何食べるの?」
わざと落ち込んだ声で聞いてみる。
反応は……無しッスか……。

薬ができるまで苦労しそう。こうなったらこの猫密を満喫(?)しよう。

気まぐれの運んだ幸せだから

コメント:
相変わらず文章がおかしいですね。一体何なんでしょうね、この話(笑)
はじめから都筑さんはこの状況を楽しんでいる予定だったんだけど。



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